初恋は雪に包まれて

キミの声



黒のタートルネックのセーター。紺色のフレアスカート。黒のタイツを合わせて。靴はお気に入りのパンブスにしようかな。

グレーのコートを羽織って、ボルドーのマフラーをぐるぐると巻く。


「……おかしくないかな。」

鏡の前に立つ私は、やっぱり平凡で。

変じゃないかな。こんな私が彼の隣を歩くなんて、笑われたりしないだろうか。

……緊張するなぁ。



一時に迎えにいく、伊東くんは言った。

私の家の場所教えてないけど大丈夫かな?と思ったのは一瞬で、すぐに"あの日"私の家まで手を繋いで送ってくれたことを思い出して、また顔が熱くなった。


何度も鏡の前でチェックをする。何度してもどこかおかしい気がしてならない。自信がないのだ。


「あっ、」

そうだ、と思い出して、鞄の中のポーチに手を伸ばした。


そこからこの間買ったばかりのグロスを手に取る。そして、出来るだけ丁寧に塗る。

……うん、やっぱり夕ちゃんに選んでもらうとハズレがない。


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