世界でいちばん、大キライ。
しっかりと聞いてしまった桃花は固まってしまう。
その様子にハッとした曽我部は、少し困った顔をしたのちにごまかすようにもごもごと続けた。

「いや。ホラ、あんくらいの年頃のコドモは扱いづらくて」

襟足を触りながら目を泳がせてそういう曽我部を、桃花はジッと見つめて言った。

「〝ダメ〟なんてことないですよ。あなたがいるじゃないですか」
「……あー、いや。まぁ……でも、アイツも一応オンナだし……」
「私の母は、父の役目もしてくれたってちゃんと思ってますし」
「え……」

思わず熱が入って、片親で育ったという自分の家庭事情を引き合いに出してしまった桃花は、「あ」と開けた口に手を当てた。
それを見た曽我部は、少し気まずい顔をして取り繕うように言う。

「そりゃ、あんたのお袋さんが立派なんだな。俺はポンコツだからな」

明るく笑っているようだったが、どこか切なげな声と表情を感じた桃花は、つい意地になるように口を開く。

「――連絡先、教えてください」
「は……?」

今度は曽我部が目を丸くする方だ。
からかってるような顔つきではないのは一目瞭然。だからこそ、その願いを突っぱねることも忘れてたじろいでしまう。

そこを押し切る勢いで、桃花はズイッと手にある携帯画面を見せるように続けた。

「もしも。本当に困った時、〝女の〟私でよければいつでも連絡してください」
「いや、でも」
「これもなにかの縁ですし。今度は私にお礼させてください」

やや強引ではあったが、桃花の真っ直ぐな目に負けた曽我部が長い溜め息と共に、ジーンズのポケットから携帯を取り出す。
連絡先を交換し終えると、桃花がぺこりと頭を下げた。
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