季節は巡り、暑い夏が街中を蒸し上げる。


弥生の部屋には冷房がガンガンにかかっていて、瑛莉菜は強制的に薄手のカーディガンを羽織らされていた。


むろん、過保護なアイツによって。



「ねえ宇野ちゃーん、暑くない? もうムリじゃない? 夏は休業にしようよー」


テーブルを挟んで瑛莉菜と向かい合う男は、夏でなくてもずっとこの部屋にこもっているくせに、頬をベッタリとテーブルに押し付けて休業を提案する。


「なに言ってるんですか!」


瑛莉菜はふたりの間に置かれた一枚の紙を手に取り、机に突っ伏す弥生の目の前に無理やりビシッと突きつけた。

紙には『増刷決定』の文字がデカデカと印刷されている。

実はこれは6刷目だ。

発売以降飛ぶように売れ、次々と重版が決まっている。


「この『公爵様のプロポーズ!』がヒットした今、先生に書いてもらわないと困るんです! 編集部も期待してます!」

「えー、だって宇野ちゃん、前も同じこと言ったよ」


弥生は唇を尖らせ、うろんな眼差しで見上げてきた。

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