エリナは男の胸に抱きしめられたまま、そっと目だけを上げて相手の表情を窺ってみた。

まず最初に目に飛び込んだのは、エリナと同じ色の柔らかそうな髪だった。

仮面は付けていない。


(舞踏会の出席者じゃないの……?)


小説の中でのエリナの記憶にも、現実世界の記憶にも、この男の姿は見当たらない。


「これはこれは……。王家のお出ましとあらば、やはりランス公爵の企みはあの果実に関することで間違いないようだ」


ランバートがエリナを抱きしめる男に対して腰を折る気配がしたが、その声には皮肉っぽい響きが込められている。


「お、王家……?」


エリナは公爵家の侍女だが、この男が本当にガーランド王家の人間なら、のほほんと抱きしめられている場合ではない。

慌てて身体を離して膝を折ろうとしたが、男の腕が腰に巻きついて離れない。


「エリナ」


どうすればいいのかあたふたと困惑していたエリナは、突然名前を呼ばれて驚いて顔を上げた。

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