【完】キミと生きた証
校舎の中はもっと汚かった。


古い木製の床には、絵具なのかなんなのか、汚れでいっぱいだし。


土足厳禁ってのがうそみたいに汚い。


・・・掃除してるのかな?


見渡す限り、まじめな人はみつからない。



「きみたちもしかして南高生?」


「めちゃくちゃ可愛いね!」



気づけばそのやんちゃそうな人たちに囲まれてる。


仁奈ちゃんが「失礼します!」って怒りながらあたしの手を引いた。



人と人との間をすり抜けても、人はまだたくさんいた。


「お、女子だ!」


「ねぇねぇ!」



手首を捕まえられて、その手の先を見上げると、白に近いほど明るい髪色で、心なしかたばこの匂いがする、いかつい人がいた。


「あ・・あの・・。」


びくびくしてたら、仁奈ちゃんがあたしの前に出て、息を吸った。


「ちょっとちーちゃんの手ぇ離し・」「おい、お前やめとけ!その子瞬の彼女だから!」


「あぁ!?まじかよ!?」



途端にパっと手が離れて、いかつい人が後ずさり。



「・・なんでもねぇわ。ははっ。」



苦笑いしながらあたしたちから離れていった。



取り残されたいかつい人の友だちを見上げると・・・なんか見覚えがある・・・。



・・・あ!思い出した。


あたしに瞬のアドレスを教えてくれた人だ!



「ごめんね、ちぃちゃんと・・その友達。」


「私は仁奈子。もしかして、あなた”瞬くんの親友”?一馬くん・・・だっけ?」


「・・・あぁ!あの時のお前か?瞬のこと教えろって電話で」


「その話はいいから!」



「えーなんでだよ?」



「っていうか!どうして瞬くんはそんなに恐れられてんの?あのヤンキー逃げてったじゃん。」



仁奈ちゃんが慌てた様子で話を逸らした。



・・でも確かに、あのいかつい人は、なんで「瞬」って聞いて逃げたんだろう?




「あー・・・。簡単に言えば、強えから?」




ははっと笑ってごまかされた。


停学って言葉が今あたしの頭によぎったけど・・。


・・・聞かないでおこう。




「俺も入学したばっかのころ、瞬に殴られたなぁ。一発K・O!ははっ。」




・・・聞かなかったことにしよう。




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