【完】キミと生きた証
翌日、病室にいけば、綺麗に片づけられて、荷物がまとめられてた。


ちとせは検査か何かに行ってるらしい。



病室に戻ってきたちとせは、椅子に座った俺を見つけると、「おはよう」って悲しいでも寂しいでもしっくりとこない、複雑な表情をした。



「…会ってくれてありがとな。」



頷くちとせの右手の薬指にも、手首にも、首元にも、ピンクゴールドのアクセサリーは見当たらない。


ベッドに置かれた携帯からも、ストラップが外されてた。



・・・”俺に守らせて”って、”別れたくない”って、言いに来たんだ、俺は。



でも、もう決意が固まってるちとせにそんなこと言って、困らせて、どうする。




時間がない・・。



そんな俺の我儘より・・・もっと、しなきゃなんねえことがある。



「ちとせ。」


俺は両手をちとせに伸ばした。


ちとせの乗る車いすは、ゆっくり、俺に近づいてくれる。



「・・・俺は、ずっと、大好きだから。」



ちとせをぎゅっとだきしめると、その気持ちを受け入れるように、ちとせは頷いてくれた。



ちとせの小さな手を握った。



その頬に、キスをすると、俯いて、顔を火照らせる。



・・・離れたくない。


傍にいたい。


でもそれが、ちとせの本当の願いじゃないなら。



「今まで、すげえ・・幸せだった。ちとせが人生で、一番の・・・。宝物だ。」



「・・・うん、・・っく。」



ちとせは嗚咽を漏らして、俺のシャツを握りしめた。



「あたしも・・・瞬が、一番・・大切な人だよ・・・。ありがとう。」



「絶対、手術に負けんなよ・・。別れてやるから、絶対、諦めんな・・。」




ちとせは何度もうなずいた。



溢れる涙を拭ってやった。



・・・せめて。


「笑って。・・・俺、ちとせの笑顔が一番好き。」



涙をためながら、にーって笑う。




俺の目から、涙があふれた。



大好きだ。


一生大好きだ。




「・・・・あい、してる。」




俺がそういうと、ちとせが小さく声をあげて泣いた。




「あたし・・死なないって・・・きっと、どこかで生きてるって、信じて・・・。だから、瞬は・・ぜ・・・ったい、幸せに・・・なって。」




息を切らせて、涙を流して、俺に伝えてくれた。






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