【完】キミと生きた証

時を重ねて



Side 霧沢ちとせ


***


数年ぶりに、この地元の田舎町に戻ってきた。


あたしを駅で迎えてくれたのは、大好きな親友。



「仁奈ちゃん・・・!」



「ちーちゃん・・・っ!!」



思わず仁奈ちゃんの両手に飛び込むと、仁奈ちゃんはあたしの頭をポンポンとなでた。



「おかえり…ちーちゃん!会いたかったぁー!!」



大人が駅でわんわん泣いて、抱き合ってるんだもん。


人は少ないにしても、注目の的だよ・・・。


でもあたしも大泣きして、仁奈ちゃんにしがみついてた。








・・・東京の病院で瞬に再会したあの日、仁奈ちゃんも遅れてあたしのところに駆けつけてくれた。




すーっごく、怒られたっけ。

すっごくすっごく、謝ったっけ。




あれから、1年がたった今日。



あたしは退院して、今、この町に戻った。




「仁奈子ちゃん、ありがとうね。」



お母さんが仁奈ちゃんに差し出すのは、やっぱり・・・感謝のみかんなんだ。


あたしは苦笑いするけど、仁奈ちゃんは嬉しそうにそれを受け取った。



「じゃあ、行こっか!」



あたしたちはタクシーに乗り込んで、昔住んでた実家へと向かった。



「で、いつ瞬くんは来るの?」


「引っ越しの搬入が終わってから新幹線だから・・明日かな?」


「そっか。じゃあ今日はちーちゃん独り占めだ!」



懐かしい仁奈ちゃんのえくぼ。
あどけない表情は全然変わらないけど。


今は・・・立派な看護師さん。




< 460 / 478 >

この作品をシェア

pagetop