不機嫌なアルバトロス
と同時に右肩をぐぃっと引っ張られて強制的に振り返ってしまい―



「え…」



唇に啄ばむように触れた柔らかな感触に、驚いて瞬くことすら忘れた。




「忘れ物」



何事も無かったかのように、にっこり天使のように美しく笑う完璧な彼は、私に紙袋をひょいと差し出した。




「ばっ」



我に返った私は―



「ばかにしないでよっ!」



バチーン!



半泣きで彼の頬を殴った。


そして転げ落ちるようにして車から降り、全速力で逃げた。



バクバクする心臓は、走っているせいだと思い込もうと必死になりながら。
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