むとうさん
「あっ、むとうさんはポテトどうですか?美味しいですよ。食べません?」

ひとかけふたかけ食べた皿を差し出してみる。

むとうさんは少しびっくりしたような表情で、いただこうかな、と皿からポテトをつまんだ。

なんか、この人かわいい。

「美味しいですよね。ハイボールと合うし。」

むとうさんはジッポを灯してひと息ふいた。

「…うまいよ。ここで腹に入れる食べ物と飲み物は。」

ちらっと左手を見ると、空いたグラスを流しに置きながら本当に嬉しそうに微笑む柏木さんが見えた。


寡黙な男の左隣で同じものを食べ、飲んでいる。ここ最近あった色々なことが、グラスの炭酸の泡のように上へのぼって弾けて消えていく心地よさを感じた。

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