誤解から始まる恋もある?
「よかった! じゃあ“かりゆし”へ行こうか」

歩きだした彼の後ろをついていき、“かりゆし”の中へ入る。

サンセットホテルはスタンダードクラスなので軽装でも気軽に入ることができるし、“かりゆし”も良心的な値段で楽しめる庶民的な沖縄料理店だ。

西海岸の夕日に見立てたオレンジ色のライトの下のカウンターには、いろいろな形の泡盛の瓶が並べられている。

その横に設置された、人が三人座れば窮屈になりそうな琉球畳のスペースでは、男性が客の会話の邪魔にならないくらいのボリュームで三線を奏でている。

三線は、十年前に亡くなった祖父がよく弾いていた。

金城副支配人とふたりきりで緊張していたけど、心地よい三線の音色に気持ちが和む。

この時間でもテーブル席の半分が埋まっていた。

奥にある四人がけのテーブルに案内されて、金城副支配人と対面で座ると、彼は早速メニューを私に渡す。

「なんでも好きなものを頼んで。あ、夕食はまだ食べていない?」
「お腹が空いたので、ちょっとだけつまんできました」

こんな時間にどかっと食べたら、体重が一キロや二キロは増えてしまうかもしれない。

カロリーが高いものは正直食べたくないところ……差しだされたメニューを見ながら、そんなことを考える。

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