冷血上司の恋愛論
再会した時はクールに
一夜限りの名前も知らない女と過ごしてから三ヶ月。日々の忙しさにすっかり忘れた頃、それは突然やってきた。


「藤城、ちょっといいか?」


駄目だと言ったところで後からになるわけもなく、俺は重い腰をあげて榊部長に近づいた。


「退社した土屋のかわりが漸く見つかった。明日から出社してもらうから、お手柔らかに頼む」


「お手柔らかにしてますって。いつも使えないのを雇う人事に問題があると思いますが。突然ってことは、また誰かのコネとかでしょ!いい加減、部長からも言って下さい!」


「まぁ、その内な。今度のは使えるって、専務が直々に人事に頼んだらしいよ」


「専務……どうせ専務の数ある女に泣きつかれてってところでしょうが。馬鹿馬鹿しい」


俺は失礼しますと頭を下げて仕事に戻った。


俺が勤務するのは、その昔は小さな障子問屋だったが、時代は瞬く間に変わり、壁紙やカーテン等を扱う住宅の内装を扱う会社へと成長した。その後、次々に手を広げ、『Strong bond』を社名に入れたSBコーポレーションとなった。


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