スセリの花冠
セロがぎこちなく愛世を見る。

愛世は自分の報われない恋の話でこれ以上困らせたくなかったのに、セロがビクリと肩を震わせたのを見て不審に思った。

「私があの女の人に刺された日も確か満月だったわ。なにか関係あるの?」

「そ……れは、その」

まずいぞ……どう言えばいいのか…。

実はあの日の事を、セロはディアランに口止めされていた。

アイセが目覚めてもエリーシャの呪いの話はするなと。

セロの様子を見て、愛世は確信した。

様子が変だ。……私が刺された事となにか関係があるんだわ。

「セロ。私は残された人生を精一杯生きなきゃならないの。でないと私にチャンスをくれた須勢理姫に申し訳がたたないわ。私、失敗しても後悔はしたくないの。何を聞いても恐れたりしないと約束する。だから」

愛世はそこで言葉を切り、漆黒の瞳に力を込めてセロを見つめた。

「セロ。私を信じて私に話して」

……この娘は……。

セロは目を見張った。

自分がさっき言った言葉を、凛とした眼差しと共に返してきた愛世の心の強さを見た気がしたのだ。

「ああ。……話すよ、愛世」

今度は自分が全てを話す番だと、セロは思った。

***

セロの口から出てくる言葉に驚きつつも、愛世はひたすら耳を傾けた。

「エリーシャさんが山賊だったなんて……」

「ディアラン様にもまさかエリーシャがギアスの妻だったなんて予想出来なかったんだ。俺がディアラン様の胸のうちをお前に話す事は出来ない。けどアイセ。ディアラン様の気持ちを察してやれ」
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