恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
幻⁈それとも現実⁈

雅樹主催の合コンの日


男達は先に来て、一部の男を除いて色め

き立っていた。


険しい顔の色男といつも薄っぺらい笑顔

の雅樹、この2人は訳ありのようで表情

が硬い。


そこへ浴衣姿の女の団体が入って来た。


早希という女の後ろに美鈴がいた。


紫陽花色の浴衣がとても似合っている。


店のお客達も女達の美しさに身を見張り

様子を伺っていた。


男達の集団と合流する彼女らにがっかり

する客達。


女の客達は男の集団を、男の客達は浴衣

姿の集団を狙っていたのだろう。


店内を見渡せるカウンターだから、店中

の視線が団体に集まっていることがわか

った。


雅樹に呼ばれ、飲み物のオーダーをとり

に席へ向かえば美鈴を見ると、視線が合

った。


俺を見つめ視線を離そうとしない美鈴に

負け、俺が先に視線をずらしてしまう。


オーダーをとりカウンターに戻っても背

後にまだ感じる視線。


ドクンドクンと心臓が跳ねる。


跳ねる鼓動を抑え、ドリンクを用意して

いく。


スタッフが順番に運んでいくが、週末だ

からか人手が足りない店内。


仕方なく店員として最後のドリンクを自

ら運ぶ。


「お待たせしました。こちらのドリンク

は…」


美鈴が手を出し受け取ろうとする。


ミモザ…彼女だとわかっていたが手を出

し受け取るとは思わなかった。


触れる指先が熱を持つ。


シャンパングラスのステム(脚)を持つ手

が震える。


なんとかその場を離れ落ち着こうとキッ

チンに逃げ込んだ。


「マスター、どうされたんですか?」


キッチンを任せている料理長が声をかけ

てくる。


「いや…そろそろ料理を出してくる頃だ

と思って来てみたんだ」


「ありがとうございます。雅樹さんとこ

の料理を順番に出していきますね。」


「あぁ、頼むな」


少しだけだが、落ち着いた俺はカウンタ

ーへ戻った。


雅樹達のテーブルに次々とスタッフが料

理を出していく様子を俺はただ遠くから

見ているだけだった。


飲み放題の為、雅樹達のテーブルから注

文が次々と入るが、他のテーブル席の接

客をしながらなのでスタッフはバタバタ

と大忙しだ。


俺も酒を作り、そのまま雅樹達のテーブ

ルに店員として運ぶ。


当たり前の事なのに…足が重く感じてし

まう。
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