幸福道

振り向くと、クラスの学級委員が居た。


「もう、松川さん!何でこんな所に居るの?」

「は?」

「は?じゃなくてっ!もう授業始まってるよ!」

「……え。ウソ。」

「何でウチが嘘つかなきゃいけないの?先生がきちゃうから早くして!」

「…うん。すぐいく。」

学級委員はあたしを一睨みしてから教室に戻って行った。







「失礼します。」
あたしは放課後、職員室に立ち寄った。


あたしは、ドアから2列目の左端の席にいる担任の所へ行った。


「太田先生。」

「おう。どうした?」

「ちょっと進路の事で相談があるんですけど。」
「おー。何だ?」

「あたし、PO美術専門学校に行きたいんです。」
「おー。松川は美術が好きだもんなあ。いいんじゃないか。」

「じゃあ、資料お願いします。」

「おう。届き次第声かけるよ。」

「はい。」



「失礼しました。」

夕方の下駄箱は、皆が居ないから嫌いじゃない。

靴を履いて、家へ向かう。

あたしは学校が嫌いだ。特に、この中学。


人が大勢集まって何かする事自体、好きじゃない。

だから高校も、行かないつもりだった。


どんなに辛い仕事でも、学校よりはましだと思ったから。

でも、この前TVのCMで、美術専門高校の存在を知った。


学校は嫌いでも、あたしだけの世界を専門的に描けるなら、行ってみたいと思った。


そうすると、何か、嬉しかった。


学校という所に、自分から望んで行けるということが、嬉しかった。


何か、あたしの世界が広がる気がした。
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