夏恵

白いブラウス

昼間はあんなにギラギラとしていたのに、夕方頃から降り出した雨は止む気配が無かった。

日帰りでも十分に帰れる距離であるにも関わらず、会社は今回僕を出張扱いにしていた。

その為僕は気持ちの余裕から駅前で少し早めの夕食を取ろうと気の効いたレストランを探している時に雨に降られた。

已む無く駆け込んだのはレストランでは無くバーに近い様な喫茶店だった。

見た目は明らかにバーだったが、昼間はコーヒーを出しているのだろう、テーブルの上に片付け忘れたのか出しっぱなしなのか砂糖とミルクが並んでいる。

その為、僕の認識は喫茶店になった。

メニューにはコーヒーや軽食と並列して酒類が並ぶ。

カウンターの奥でマスターが一人慌しく動いていた。

この店の、喫茶店とバーの境目の時間に来る客は珍しかったのだろう。

僕が来店した時、マスターは新聞を読みながらカウンター席で煙草をふかしていた。

僕が入ると慌てて身なりを整えたくらいだ。


僕は安っぽいナポリタンを平らげ、コンソメスープを飲み干し、食後のコーヒーを飲みながら、日もとうに暮れた外に振る雨を恨めしげに眺めながら、酒を頼もうか悩んでいた。
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