好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
看病
合コンから一か月が過ぎた、ある日のこと。

「章子先輩。金庫室に入れてた硬貨がいっぱいになっちゃったんですけど、どうすればいいですか?」

美希ちゃんにそう尋ねられる。うちは銀行だから、当然日々、たくさんの硬貨がたまっていくのだけど、溜まりすぎた硬貨は袋に詰めて、本部に送ることになってる。

その袋詰めの作業を美希ちゃんに説明していると、うしろから先輩の小野(おの)さんが、「懐かしいわねぇ」と声をかけてきた。

「え? なにがですか?」

「モモちゃんが新人さんの頃に初めてその硬貨袋作った時、体が小さすぎて、モモちゃんじゃ硬貨袋持ち上げられなかったのよねえ」

フフ、と小野さんが楽しそうに言い、美希ちゃんもつられて笑った。

「い、いやいや。あの頃はそうでしたけど、今は持てますよ、こんなもん!」

ふたりとも、私をバカにしたわけじゃないっていうのは分かってたけど、そんな風に言われたら、つい言い返してしまった。
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