今夜も隣人に壁ドンする
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数日たっても変わらず隣部屋からの音に迷惑していたが、女のアザを見て以来俺は違う心配をしていた。
男の怒鳴り声、何かが割れる音、泣き声……DVというやつじゃないか? 警察に通報した方がいいか、ほっとくべきか……。

迷っていると今夜も隣から男の声が聞こえ始めた。ガシャン! とまた何かが割れた。

おいおい……下の階のやつとかも迷惑してるだろうから通報してくれよ……。

「やめて!」

壁越しにあの女の声が聞こえた。
俺は腹を括った。自分の部屋を出て隣の部屋のチャイムを押した。

「すんませーん……」

暫くして男が出てきた。

「何か?」

俺は拍子抜けした。どんな強面のにーちゃんが出てくるのかと思ったが、目の前の男は細身でメガネをかけた優しそうな男だった。

「あの……もう少し静かにしてくれません?」

「すみません。ちょっとケンカ中でして」

男は眉を下げ申し訳なさそうに謝る。俺はドアの向こうに女の姿を探したが、部屋の奥にいるのか姿が見えない。男は俺の視線を遮るようにドアを少し閉め、部屋の中が見えないように立った。

「本当にすみません。気をつけますので」

「お願いします……」

言うことを言った以上、もう自分の部屋に戻るしかない。
その後は隣の部屋から物音一つ聞こえなかった。







俺が部屋の前で鍵をカバンの中から探していると、アパートの階段を上がってくる音が聞こえた。あの女が買い物袋を持って上がってきた。

「こんにちは」

「こんにちは……」

俺は一瞬息が詰まる。女の右手首に包帯が巻かれていた。俺の横を無言で通り抜けようとしたが「あの!」とつい引き止めてしまった。女は不思議そうに俺を見た。

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