唯一の純愛
きっかけ
当時の私は退屈だった。
身一つで見知らぬ土地へと移り住み、二年が過ぎようとしていた。

会社の同僚ともそれなりに関係を築き、それなりに責任のある立場にもなっていた。

他人から見れば、順風満帆の人生だっただろう。
私自身、その人生に不満があったわけではない。

ただ、退屈だった。

年齢的にも、もう少し遊んでいたいと思える年齢だった。

とは言え、地元からも遠く離れ、遊ぶ相手もいなかった。

そんなある日、転機が訪れる。

社内の大幅な人事異動に伴い、ある人物と出会う。

その人物は私よりも少しだけ年上だったが、立場的には部下の一人として配属されてきた。
新たな部下とのコミュニケーションを模索していた時、上司が助け船を出してくれた。

上司が言うには、彼はカラオケが趣味らしい。
幸い私もカラオケは好きな方だ。

いや、むしろ大好きだ。

カラオケを切り口に彼とのコミュニケーションを試みる。

共通の話題というのは、老若男女問わず強力な武器となる。
私と彼が打ち解けるのに、さほど時間はかからなかった。

ある日、私は彼に提案する。
カラオケで派手に遊ばないか。

彼は意味が解らないといった表情だった。
私は彼に自分の計画を話す。

某コミュニケーションサイトを利用して、知らない人同士でカラオケを楽しむサークルを立ち上げる。
それが私の考えた計画。

そんな事が可能なのか。
そんな怪訝そうな顔をしていた。

だが、私にはそれを実現させるためのいくつかの策と、根拠のない自信があった。
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