空のギター
「……まぁとにかく、これからよろしく!俺達五人でユニット組むんだろ?明日からレッスン始まるし、毎日寒いけど頑張ろうな!」



 雪那の異変を感じ取った光夜が機転を利かせて言った。頼星がホッと息をつく。他の三人はコクンと頷いた。もうすぐクリスマスがやってくるが、今年は五人がそれを楽しむ暇はないようだ。硝子に言ったら「芸能人に休みはありません!」と言われてしまいそうなので、彼らはそれぞれ、胸の奥に言葉をしまい込んだ。

 ──その時だった。突然ドアが開いたかと思うと、先程まで自分達を呆然とさせていた眼鏡の女性が現れる。



「……あら、あんた達まだ居たの?まぁ、丁度良かったわ。言い忘れてたけど、あんた達のグループ名、実はもう決まってるのよ!」

「えっ、何ですか!?」



 驚いて雪那が尋ねると、みんなの視線も一斉に硝子へ向く。硝子はニコリと微笑み、壁際にあったホワイトボードに黒のペンで文字を書き始めた。ボードがキュッと音を立て、五人の視線が集まる。



「……“Quintet”。イタリア語で“五重奏”って意味よ!あんた達にぴったりだと思うわ!!」



 ──五人の伝説は、もう始まろうとしていた。
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