空のギター
「ところで、雪那と頼星、転校しなくて良くなったらしいね。良かったな!」



 風巳が二人に言うと、雪那は「うん!」と答える。春風のように爽やかな笑みだ。



「とりあえず、卒業までは学校のみんなと過ごせるみたい。転校なんてやっぱ寂しいし……ね、頼星?」



 雪那の言葉に頷く頼星。無表情に見えるが、彼が嬉しいと感じているのだということが雪那には分かった。僅かな口元の変化から、それを読み取った。



「おう、転校って面倒だしな。それに、上京する時はみんなにちゃんと挨拶してからが良いもんな。」



 頼星はそう言って微かに笑う。やはり嬉しかったのだろう。滅多に笑わない彼が笑顔を見せたので、光夜達もそれを悟った。



「転校ってさ、何か後味悪い気がするよな。どうせなら紘みたいに、卒業と同時に、みたいなはっきりした区切りが欲しいっていうか。」

「俺もそう思ってた!嫌なんだよね、中途半端って。」



 頼星と雪那のやり取りを聞き、光夜が「ほんと気が合うんだな、お前らは」と、笑う。風巳と紘も首を縦に振り、やはり笑っている。すると突然、楽屋のドアがギィーッと鳴く。驚いた五人は、一斉にそちらへ目をやった。
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