TRIGGER!2




 病院を出てから風間はそのまま何処かへ向かい、他の連中はキウイが運転する車でマンションに戻った。
 考えてみれば、今日も徹夜だ。
 だが珍しい事に、昨夜この部屋を出てから、一滴も飲んではいない。
 部屋に戻った瞬間に彩香は無理やり着せられたこのウザいワンピースを脱いで床に叩きつけると、真っ直ぐにバスルームに向かった。
 少し熱めのシャワーを頭から浴びて、スッキリしたところで、冷蔵庫からかろうじて一本だけ残っていたビールを取り出して、プルトップを開ける。
 ゴクゴクと喉を鳴らしながら半分ほど飲み干して。
 彩香はソファに座ると、タバコをくわえて火を点けた。
 ジョージも少し眠ると言って自分の部屋に帰ったし、オカマちゃんトリオも夕方マンションに来ると言って自宅へ帰って行った。
 峯口建設の従業員がしっかりと警備してくれているからなのか、マンションには何も変わった事はない。
 六階の水島も、今頃はがっつりとガードされているのだろう。
 クラブ“AYA”の従業員並みに黒ずくめの連中とも渡り合える輩なのだろうから、何の問題もない。
 居酒屋“結”の友香、そして雛子も同じ。
 ただ、唯一心配なのは、四階のホクロの奴だ。
 所在が一切分からずに、その本当の姿も誰もわからないのだから見つけようがないというのは、敵だけではなく味方も同じだ。
 全く、今頃どこで何をしているのか。
 彩香は溜め息をついて、残りのビールを飲み干し、そのままソファに横になって目を閉じる。
 過去は過去。
 生きている限り、誰もが持っているもの。
 それがどんな過去であれ、決して変えられるものではない。
 そして・・・どんなに薬を飲んだところで、消えるものではないのだ。
 例えそれがどんなものでも受け入れて、どんなに重くてもそれを背負って生きていく。
 死ぬまで、ずっとーー。


「・・・・・・」


 天井を仰ぎ、彩香は額に手を当てた。
 自分の過去はーー。
 多分もう、背負い切れない。
 この街に来たから。
 決して真っ当ではなく、理不尽と騙し合いが蔓延っているこの街は、彩香にとってはとても心地が良かった。
 その中でしか生きられない人間もいるのだ。
 ここにいると、まるで自分が真っ当であるかのような錯覚を覚える。


「笑うよな・・・」


 誰にともなく、そう呟いた。
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