TRIGGER!2





 “スターダスト”を出て、彩香とジョージはまだ煌々と灯るネオンの街並みを、肩を並べて歩いている。
 ジョージはジョージで何かを考えているらしく、何も話し掛けて来ない。
 だが彩香には、そのほうが良かった。
 店を出てからどうも、頭が重い。
 そんなに飲んではいない筈なのに、まるで二日酔いのようだ。
 確かに疲れてはいるが、それ以前に体調がどうもおかしい。


「・・・・・」


 彩香は軽くため息をついて、こめかみを押さえる。


「どうした彩香。もしかして眠いのか?」


 こっちの顔を覗き込んで、ジョージは言った。


「んなワケねぇよ。まだ宵の口だろ」
「あんまり無理すんな」
「・・・バカにしてんのか?」
「あのなぁ」


 ジョージは呆れたように。


「普通に心配してるだけだろ。どーしてお前は」


 そう言いかけた、その時。
 ガチャン! と何かが割れるような音がして、それから小さな爆発音が聞こえてきた。


「え?」


 彩香とジョージは思わず、そっちに視線を送る。
 その先には、峯口が所有する高級クラブ“AYA”があった。
 その店の前で、不信な動きをする男が数人。
 そのうちの1人が、手に持っていた火炎瓶を、店の中に投げ込んでいる。
 揃いも揃って全員が黒づくめの格好で、この熱帯夜にも関わらず、黒いニット帽を被っていた。
 それを見ると同時に、彩香は走り出す。


「おい・・・!」


 ジョージも慌てて彩香の後を追った。
 あの連中は。
 マンションで水島を連れ去った連中と同じじゃないのか。
 男達が連れ立って“AYA”に入っていく。
 数秒遅れて彩香とジョージは店に着き、ドアを勢いよく開けた。
 店内はあちこちに火柱が上がっていて、慌てふためくホステス達と客の悲鳴が店の中に響いていた。
 彩香は一番手前の男に、後ろから飛びかかる。


「・・・・!?」


 不意打ちを食らう形で倒れた男に気付いた仲間が、こっちに向かって持っていた銃を構えた。
 やはりこいつらも、マンションの時と同じように銃を持っている。
 ジョージと2人なら相手にできない人数ではない。
 だが銃を持った相手に、客達に怪我をさせないように倒すには、いささか分が悪い。
< 75 / 206 >

この作品をシェア

pagetop