僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
おまけ1〜龍人の場合〜
彼女の部屋の扉の前で大きく深呼吸する。


俺は、これからどんな現実が待ち受けていようとも、それを受け止めるつもりだ。



事の発端は昨日、春香とのデートの後に、高校からの友人でもある鷹の家に行った時だ。



鷹の部屋に通されると、テーブルの上の赤いラッピングの箱に目がいった。



「あ、気がついた?これさぁ〜彩花に貰ったんだ〜。」



デレデレと締まりのない友人を見ると、


「何だよ。お前も貰ったろ?」



意味の分からないことを言われた。


「何を?」


「え?チョコだよ。バレンタインのチョコ。

 彩花がみんなで一緒に作ったって言ってたぞ。お前の彼女も一緒じゃなかったのかよ。」



そう言われて固まった。


理由は知らないが、付き合ってバレンタインは3回あったが、春香からチョコレートを貰った事は一度も無い。



それについて特に疑問は無かったが、春香が手作りを用意したとなると話は別だ。



俺は、貰ってない。



じゃあ、春香の手作りは誰にいったんだ・・・



怖い


何考えてるのかわからない



それが今までの女の子からの俺の評価だ。


その俺に、春香という彼女は勿体ないくらいだ。



もしかして、春香はとっくに俺の事なんて好きじゃないのかも知れない。



そんなネガティブな考えばかりが頭をよぎる。



「おい!!龍人!!」


友人の声で我に返る。



「ん。」



差し出されたスマホの画面には、短く


『自分で直接確かめなさい。』


そう書いてあった。
< 44 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop