不機嫌な君
そんな会話をしていると、人事部長が中に入ってきた。
…オフィス内は一気に静かになり、人事部長の後ろに釘付けになった。


…超絶イケメン。
オフィス内に、黄色い声が聞こえ始める。

180㎝以上の長身、ブラックスーツにブルーのストライプネクタイ。
黒縁メガネの奥にある切れ長な瞳。

100人中100人がイケメンだと言わざるおえない容姿をしていた。

「みんなもう来てるかな・・・藤村君」
すぐ傍にいた葉月さんに問いかけた人事部長。

葉月さんは辺りを見回し。
「はい、全員揃っています」
その言葉に、人事部長は頷いた。

「6月と言う中途半端な時期だが、この総務部部長の吉永君が異例の移動で急きょ代わりの部長が決まりました。
金崎右近さんです。金崎と聞けばもうわかると思うが、この金崎物産社長のご子息…ゆくゆくはこの金崎物産を背負って立たれる方です・・・くれぐれも粗相のないように。金崎部長、後は宜しくお願いします」

そう言うと、人事部長はオフィスを出ていった。

皆の視線は一気に金崎部長に注がれる。
「金崎右近です。・・・さっき人事部長が言った事は本当ですが、それを鼻にかける事はありません。
それを武器に使うつもりもない。皆さんと同じ総務部の社員ですので気負いせず、何でも話してください」

その言葉に、そこにいた社員は皆、金崎部長に好感を持った。
皆さんと同じ総務部の社員。

ちっとも御曹司だと言う事を鼻に掛けない。
この人の下ならやっていける。そう思っていたのに。

それは数時間後。
一気に逆転した。



「何年仕事をしてる?こんな初歩的なミスをするバカがどこにいる?」
「…すみません」

・・滅多にミスをしない先輩のはずが、今日に限ってミスをしたらしく。
金崎部長が怒声を浴びせていた。

ミスは勿論あってはいけない事だが、『バカ』なんて酷い言い様。
その場にいた社員は凍りついた。
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