大きなボストンバッグを手にして彼が待つ車へと戻った私。

運転席の後ろの席に座った筈なのに、何故か私の視界には助手席のシートが映っている。


さすが、高級外車。

車体の揺れが殆ど無く、乗り心地が物凄くいい。

物凄くいいんだけど、……何だろう?

とてつもなくありえない、この状況は。



車に戻った私は運転手の男性にボストンバッグを手渡し、ドアが開かれていた後部座席へと乗り込んだ。

私の荷物はトランクに乗せて、運転手は軽やかに車を走らせた。


すると、私の隣りに座っている彼が、徐に私の後ろ首を掴んで手繰り寄せた。

一瞬の出来事で何が起きたのか理解するまでに数秒要して、漸く状況が呑み込めたのが今さっき。


――――私は今、彼の膝に頭を預けている。


決して、預け心地がいい訳では無い。

筋肉質の硬い脚の上に乗せているのだから、当然なんだけど……。


それに、私の無防備な肩に左手を乗せ、時折指先をトントンと動かし、まるで私をあやしているみたいにして。


サラッとしている高級スーツの布越しに彼の体温を感じて、思わずトクンと心臓が跳ねる。



どこに向っているのか。

私をどうするつもりなのか。


自ら決断した筈なのに、不安と恐怖と後悔で……今にも押し潰されそう。



現実から逃避したくて、ギュッと瞼を閉じた。


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