Love nest~盲愛~
「いいだろう。お前には、俺の望みに見合ったモノをくれてやる。それでどうだ?」
「…………………その言葉に、嘘偽りはありませんね?」
「俺を誰だと思ってる。…………男に二言は無い」
言葉を裏付けするように、射抜くように真っ直ぐ向けられた視線。
『冗談は嫌い』だと言った言葉を鵜呑みにしてしまったからかもしれない。
だけど、彼の真剣な瞳がそう思わせてならなかった。
「………分りました。では、等価交換という事で」
「フッ、いいだろう。その方が、話が早い」
「ッ?!………えっ、ちょっと………」
急に立ち上がった彼は、私の腕を掴んだまま歩き出した。
すると、VIPルームを出て、賑やかなフロアを堂々と歩く。
そして、出入り口のドアの前に松川さんが私の鞄を手にして立っていた。
事務所のロッカーに入れておいたはずの私の鞄。
彼は松川さんからそれを受取り、丁寧にお辞儀をする松川さんに片手を上げて、そのまま店の外へと連れ出した。
そして、店の前に停めてある高級外車の後部座席に私を無理やり押し込んで。
「寮へ回してくれ」
「承知しました」
私を乗せた車は、数分で従業員アパートの前に到着した。
私は恐る恐る視線を横に向けると、
「今すぐ荷物を取って来い。5分だけ待ってやる」
「へ?」
「さっさとしろ。報酬から差し引くぞ」
「ッ!!」
彼に急かされるように車から飛び降りた。
このまま、逃げてしまおうか。
そんな事を何度となく考えながら、私物を取りに―――――