Love nest~盲愛~


それにしても、彼は一体誰なんだろう?

あの店のオーナーだという事は解ったけど、“店を潰す”という言葉が引っ掛かる。

自分の店をわざわざ潰す人なんている?


それに、彼とは面識がない。

面接の時は黒服責任者の松川さんだったし、松川さんの指示であかりさんが私の教育係になった訳だし。

私の履歴書を見たとしても、好かれるような理由が思いつかない。


まさか、私の顔が好みのタイプだとか?

それとも、経験の無さそうな顔をしてるから、遊ぶにはもってこいだと思われたのかしら?

理由が何であれ、彼の“モノ”として、これからの人生が始まるって事よね?


何だか物凄く、後悔の念が今頃になって押し寄せて来た。


生きる為に何でもしようと思ったけど、結局思っていただけで、私には無理なんじゃないかしら?

だって、ちゃんと働いた事もない上に家事だって真面に出来ないんだから。



私の価値なんて、たかが知れてる。

話し相手になるくらいで、価値なんてゼロに等しい。


だから、私の身体が目当てだとしか思えない。

だとすると、今夜……――――



閉じている瞼の隙間に涙が滲む。

心なしか、身体が震えて来た気がする。


大変、彼に気付かれてしまうわ。

両手をギュッと握りしめ、必死に堪えようとすると。



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