あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
そんなことを思いながら、あたしはバスに乗り込み、学校へと戻った。





バスを降りて、グラウンドで集会のあとに解散してから、あたしは校舎のトイレに入った。




予想していた通り、目が真っ赤に腫れていた。




橋口さんが凍らしたペットボトルを貸してくれたので、バスに揺られている間ずっと目に当てて冷やしていたんだけど。




あれだけ泣いたら、そんなにすぐ治るはずがない。




あたしはため息をついて、教室に入った。




もちろん、誰もいない。




グラウンドから、サッカー部や野球部の掛け声が聞こえた。




耳を澄ますと、音楽室からは吹奏楽部のパート練習の音、体育館からはバスケットボールの跳ねる音。




それらを包み込むような蝉の声を聞きながら、あたしは目の腫れが治まるのを待った。





教室の中が少しずつ夕焼けの色に染まってきたころ、あたしはやっと席を立った。




生徒玄関の靴箱でスニーカーに履き替え、外に出る。





夏のにおいがした。




胸いっぱいに空気を吸い込んで、また、



新しい世界だ、



と思った。





どこか清々しい気持ちで、あたしは校門を出た。





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