君をひたすら傷つけて
第三章

 それは偶然のことだった。

 でも、今になって考えてみればこれが運命だったと言えばそうかもしれない。私がこの日、高取くんのお兄さんに会うことがなければ今とは確実に違う人生を歩んでいたと思う。


 でも、私は後悔していない。

 
 高取くんが学校に来なくなって一週間が過ぎていた。最初は心配をしていたクラスのみんなセンター試験が迫った今、自分の事に精一杯で高取くんのことを忘れたかのようになっていた。そんな中、私はやっぱり忘れられず、時間を見つけては返信がないのにメールを送り続けていた。

 塾はセンター試験に向け、必死に気合いを入れて行く。そんな中、私はその勢いの波に乗れずに心のどこかで冷めていた。そんな塾の帰りに私はお兄さんの姿を見かけた。

 駅から何か大きな袋を持って歩いている姿は誰も寄せ付けない雰囲気を纏っていて、私は声を掛けるとのを戸惑ってしまった。でも、どうしても高取くんのことが知りたくて私はお兄さんの後ろをついて歩いた。塾が終わった後の時間はかなり遅いので家に帰らないといけないのに、それでも私はお兄さんの背中を追った。

 お兄さんの向かった先にあったのは総合病院だった。もしかしたらあの病院に高取くんは居るのかもしれないと思うと、そのまま後ろをついて行きたかった。でも、塾が終わったこんな夜遅くに行っても仕方ない。そう思い明日、塾が始まる前に行くことにした。
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