それから三ヵ月後ー…







『海、明日、親父が帰国するって』



俺は固定電話の受話器を置き、ダイニングテーブルで夕食をとっている海にそう話しかけた。







『あー、そっか良かった』



海はそう言って、中断していた食事を再び口に運ぶ。









『良かったな、結納、三日後だもんな』




『まぁな…』



にんまりと微笑む海に俺は“良かったな”ともう一度告げた。








『これで紗奈の一番は俺になったんだよな…』



海があまりにもしみじみと言うから、俺は“なんだよ、惚気やがって”と突っ込みを入れる。




『紗奈の一番はずっと、紗奈が待っていた人だと思ってたからさ…。
 なんつーか…ようやく紗奈もその人の事を吹っ切れてくれたんだなー、みたいな?』







“紗奈の一番は、紗奈が待っていた人”


“紗奈がようやく吹っ切れた”



海の発した、その言葉達が俺の胸に痛みを与えるー…








『彼女の一番はさ、お前と付き合いだした頃からお前だけだろ?』






『んー…実はさ、俺、紗奈には何回も振られてるんだよね…』



海は頭を搔きつつ、そう困ったような顔を見せながら、そう言った。







『振られてる…?』







『紗奈と初めて話した時、俺、紗奈に間違われたって話したじゃん?
 紗奈、俺の顔を見て、“やっと来てくれたんだね”って言ったんだ。

 え、って心の中で思ったのが口から言葉として出ててさー。
 俺の声を聞いた紗奈、“ごめんなさい、すごく似てる人だったから”そうすぐに謝ってきた。

 声を聞いただけですぐに分かるくらい、その人のことが好きだったんだなって思って、絶対に叶わない恋だと思った…。

 
 それに…俺、間違われると言えば兄貴しかいないし?
 俺、兄貴と一瞬間違われたのかと思ってさー』







『……俺?』








『だって俺達、双子じゃん?
 だから紗奈がずっと待ってた人って兄貴なんじゃないか…って疑ったりもしてたんだ、実は…』



海はそう言って、ハハハと笑ったー…






『だから、紗奈に兄貴のことも紹介したいから兄貴も呼んで飲みをしようって誘ったんだ。
 二人の反応を見れば俺もなんか分かるかな、とか思って?

 まぁ…紗奈も“はじめまして”って言ってたから、やっぱ兄貴じゃないのかって思ったり…』




そう言う海は笑ってる、でも俺は反して笑えないー…



海が笑えば笑うほど、それに反比例するかのように俺は笑えなくなったー…












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