黄昏と嘘

・今日より明日


今日、チサトは午後の講義が休講になったのでせっかくだから同じ講義を取っているカノコとどこか寄り道しようかと声をかけた。

「ね?これからどっか服、見に行くとか、しない?」

「うーん、ごめん。
さっき、バイトを入れてしまったから無理ー」

カノコは空を見上げながら、腕を組み答える。
大学内の木々も黄色や赤に少しづつ染まり始め、木々や芝が多いせいか風が気持よく感じられる。

午後の授業が始まる前の昼休み、たくさんの学生が歩き目的の場所へと移動している。 

カノコとは以前のように元通り、付き合っている。
アキラとのことを白状させられた以上、もう何も隠すことはなくなってしまったし、逃げる必要もなくなった。

それでも実家にバレたらどうするんだ?、あんなひとと暮らしてたらロクなことにならないから、
と顔を合わせれば同居を解消するようにカノコは言うけれど、チサトは時間があるときは実家に帰るようにし、連絡は携帯を使っている。

それにとりあえずはカノコのところに住まわせてもらっていることにしているからすぐに実家にわかってしまう、ということもない。

アキラの事にしてもカノコが知らないだけで本当はやさしいひとだとチサトは確信していたから特になにも思うことなどもないのだ。

< 138 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop