黄昏と嘘

危ういけれど今の生活を終わりにはしたくない。
3ヶ月というアキラとの約束だったけれど彼さえ迷惑でなければこのままずっと一緒に暮らせたら、とまで思い始めていた。

「・・・でも、迷惑なんだろうな」

チサトは小さな声でうつむき自分の影を見つめながらつぶやいたものの、慌てて手で口を塞ぐ。

カノコは立ち止まり、急に何か思い出したようにチサトの方を向いて言った。

「あ、そうだ。でもチサトはどっか寄り道して帰ったほうがいいよ?」

どうやらさっきのつぶやきはカノコの耳には届いていないようだった。
少しほっとするチサト。

「・・・どうして?」

少し間をおいて答えカノコの方を見る。

「今日、小野先生、授業が終わったら予定がないっぽい感じの話してたから早く帰るかもしれないから」

チサトに寄り道するように、アキラが早く帰るかもしれないから、そう言うということはきっとカノコはチサトが早く帰り、アキラも直に帰ってくるかもしれないということで何か嫌な思いでもするのではないかと心配して言ってくれているのだろう。


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