気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
 高層マンションの二十三階にある2LDKの部屋に案内したが、凜香はリビングのソファでくつろぐ様子もなく、窓に張りついて外を見ている。

「夜景、きれいだろ?」
「そうね」

 口数も少ない。

「凜香はあまり料理しなさそうだよな」

 透也は対面式キッチンで、チキンにハーブソルトを振りかけながら言った。振り向いた凜香がキッチンに近づいてくる。

「そう? 透也くんの方こそ料理しなさそうよ」
「お姫様のハートをつかみたいなら、男子も厨房に入らなくちゃ」
「お姫様、ね」

 凜香がふっと小さく笑った。

(俺が誰にでも言ってると思っているんだろうか。ま、確かにそうだけどさ)

 社長の息子だけど、次男だから結婚しても家や両親はついてこない。そんなことを考える女の子たちにとって、透也は絶好のターゲットだ。だが、透也はまだ二十五歳。結婚なんてまだ考えられないし、何よりまず課長をうならせるようないい企画を考案したことがない。

(そう、凜香みたいに周りからも上司からも……兄貴やオヤジからも一目置かれるようないい企画を出せないうちは、結婚なんてないな)
< 33 / 91 >

この作品をシェア

pagetop