恋する淑女は、会議室で夢を見る

「 … 」

気配に目を覚ましたのか、真優はゆっくりと目を開けて
遥人をボンヤリとした瞳で見つめた。



「… 専務」

「ん?」


「… マー先輩は
 優しい人なんですよ」


「…」


「―― なのに  私… 」


真優の瞳から、涙がこぼれ落ちた。





「… 専務

     キスして」

と、真優が言う。


「――寝ぼけているのか?」

遥人が聞くと、
真優は左右に首を振る。


遥人はしばらく真優の瞳を見つめて

そっと唇にキスをした。



唇が離れると

真優は

「… おかしいなぁ

  専務のキスは  ちっともイヤじゃないのに…」


夢をみるようにそうつぶやいて

またゆっくりと、瞼を閉じた。



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