恋する淑女は、会議室で夢を見る


・・・




リムジンに乗ると
車が走り出すやいなや、真優はスースーと眠りについた。


遥人はそんな真優を見てクスッと笑ったが
短い袖からスラリと伸びている真優の白い腕が、少し寒そうに見える。

真優との間にある肘掛けを後ろに倒し
自分の上着を脱いだ遥人は、真優にそっと掛けた。



花柄の白いワンピースは、会社に着てくるものとは違って女の子らしく可愛くて、
靴もバッグも、遥人が見かけないものを身に着けている。

恋人とのデートにこそ相応しい出で立ちは、
そういうつもりで出かけてきたことを物語っていた。



「…なにが”友達”だ」


膝から落ちないように、掛けた上着を整えていると

街の灯を反射して
真優の目元で、キラリと涙が光った。



「…」



――いつもの笑顔で俺を褒めたのか?



遥人は、白木匡に向けられたであろう真優の無邪気な笑顔を思い浮かべた。


無邪気は、時に人を傷つける。

だた、青木真優はむやみに無邪気という名の刃を振り回すような無神経さはない。


―― その場の闇をはらって、明るくしようとする真優の無邪気な笑顔が
  あの男を不安にさせたのか …



スッと手を伸ばし、涙を拭おうとすると
真優の胸元のネックレスが目についた。

宝石で出来たケーキのペンダントトップ…


デートに身に着けるには少し不自然な、ネックレス…


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