あんなことは、
ちっとも珍しいことじゃなかった。

下駄箱にはぎゅうぎゅうの
ラブレターと言われる
紙くずが
押し込まれ、

休み時間の度に呼び出し、

あまりに迷惑ですので、
呼び出しに応じなくなると、
あのように
所構わず告白してくる。


「大体、恋なんて、
一過性の精神異常でしょう。

好きでいても、その関係性を
壊してしまうのなら、
最初からそんな関係性いらないです。」

俺は、保健室のベッドでそう呟いた。
あまりに今日は、告白が多く、
保健室に逃げてきたのだ。

「精神異常とはいただけないわね。
だったら、一回くらい
私を受け入れてみたらいいわ。
人の気持ちも受け止められない
お子ちゃまのくせに。」

そう答えたのは、
校医だった。

「結構です。
先生のは好意ではなく性欲でしょう。」

俺もさらりと答えた。

この校医だけではない。
こともあろうか
聖職者である人間の発言とは思えない。
体にフィットした
いやらしい格好をし、
男子中学生を惑わせる。

俺はそういう女が女である部分にも
嫌気が差していた。

そして、俺は、そういう女に
少しも心が動かなかった。

自分の方が
欠陥品だと思うほどに。

「真面目すぎてつまんない。」

先生は、そう言って笑った。

「褒めていただき、ありがとうございます。
助けていただき、感謝しますが、
卑猥な発言は以後謹んでください。」

俺はそう言って立ち上がった。


「あんたみたいな男に限って、
やばいんだからね。」

先生は、
たばこに火をつけた。


「何がですか?」

俺は笑顔で聞いた。


「女に一回ハマったら、
止まらないって言ってんの。

自覚しといた方がいいよ。
嫉妬と独占欲で何するかわかんないよ。」

先生を憎めないところは、
こういうところにある。

俺の黒い部分をしっかり見ている。


「ご忠告ありがとうございます。」


俺はそう言って、
保健室を出た。

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