さぁ、オレと恋をしてみようか
気付いたら、大声でお兄さんを呼び止めてた。


声に気付いたお兄さんは、クルリとわたしのほうを見てくれた。


「芽衣子……木原芽衣子です!!」


〝芽衣子〟って名前が、イヤだった。


なのに今わたしは、お兄さんに〝芽衣子〟って名前を覚えてもらいたいと思ってる…。


「オレは、奥田千織(おくだちおり)。じゃーな、芽衣子。今度は、焼きそばでも買いにおいで!」
「……はいっ!!」


千織、さん…。ステキな名前。しかも〝芽衣子〟って、呼んでくれた…。


どうしよう、胸がトクトクいってる。


「これって、恋…?」


口に出してみると、頬がボンッと熱くなる。


でもわたしは、20歳…。千織さんは、37歳…。


「ゼッタイ、無理じゃん」


相手にされるはずがない。もう、いいや。


こんなところに立ってても仕方ない。とりあえず、家に帰ろう。


複雑な気持ちのまま、家までの道のりをトボトボと帰った。


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