【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「なぁ美樹……」


そして、その表情が声に現れたようは深刻そうな低い声を出し、里佳子が美樹の背中へと言葉をぶつける。


「どうした?ってか、里佳子ってそんな真面目な顔出来るんだ。おっさんびっくり」


「茶化すな!ちゃんと答えろ!……ルイのその本体のHDDは、まさか数年前そいつが小さいロボットだった時のままじゃねえよな?笑里んとこのオトン、ちゃんとそこからデータ移行して最新のスゲーの、使ってるんだよな?」


苦虫を噛み締めたような里佳子の表情を見ても、その質問の真意がイマイチぴんと来ない。


里佳子はそれを知ったうえで、どんな危険を確かめようとしているのだろうか。


あまりもいつもの里佳子と違う声に、美樹も驚いたのか、作業の手を止めて振り返る。


そして、しばらく里佳子と見つめ合った後、重たい空気の中、また、先程のように溜め息を落とした。


「……例えばだけど、里佳子の記憶をまるまるデータ化したとする。それを違う器に移したとしようか。さて、それは果たして里佳子なのだろうか?」


真意の分からない里佳子の質問に、真意の分からない返しをした美樹。


二人の間で一体どんな駆け引きが行われているのだ。


里佳子はその美樹から返って来た言葉に唇を力いっぱい噛み締めた。おそらく、あまり良くない答えが里佳子中に浮かんだのだ。私は考えても考えても、答えどころか質問すら理解出来ずに蚊帳の外。
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