坂道では自転車を降りて
ここまでか。納得のいかない脚本が既成の脚本と比べて採用される見込みも薄いし、もし採用されたとしても、見切り発進のような形で、稽古が始まってしまうのも悔しかった。

「前回よりずっといい。ここまで書けていれば十分なんじゃないかな?」
笠原先輩は言った。
「いえ、このままだと、俺が、納得いかないというか、演出できる自信がないです。」
前回、演出を担当した笠原先輩ならば、分かってくれるはずだ。
「ここまで書けてるなら、私は既成の本じゃなくて、これで行きたいな。動いてみたら、また何か出るかもしれないし、」
看板女優の清水先輩が言う。
「そうかもしれませんが、、、、」

それも一理ある。俺だって初めての挑戦だ。
「これで良いじゃない。脚本家がいると、途中でも書き直せるのがいいじゃない。そういうのもやってみたかったのよ。」
「まだ時間はあるけどさ、時間をかければ、良くなる見通しがあるの?」
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