強引上司の溺愛トラップ

ゲームオーバー。

月曜日。

課長に金曜日のことを謝るため、いつもより少し早い時間に出勤してみた。


課長は既に、自分のデスクで仕事をしていて。



うー……早く謝りに行きたいけど、この前髪を見られるのが恥ずかしい……。


私はさっきから営業室の入り口の柱の影でウロウロして、課長に挨拶すら出来ていなかった。



すると。


「あ、ナベちゃんおはよー。早いね」

後ろから、係長さんが声を掛けてきてくれた。


「金曜日ちゃんと帰れた? 随分飲んでたねー」

「は、はい……」

「何でさっきから後ろ向いてるの?」

「あの、その……」

そんな会話をしていると、私たちの声に反応してか、


「渡辺? 来てるのか?」

と、課長が席を立ってこっちへやって来た……。



「お前……」

課長が私の顔を見て、いつものクールな表情を崩し、驚きをあらわにする。


「へ、変ですよね、やっぱ!」

私は自分の前髪を両手で抑え、俯きながら答えた。

だって神くんてば、「流行りだから」って言って、眉毛よりも随分上に前髪カットするんだもの!

神くんは、美容師としての腕は確かで、この前髪も、「ただ流行りってだけじゃなくて、このくらい切った方が佐菜には似合うから」って言ってくれた。


でもやっぱ恥ずかしい‼︎



……それに、恥ずかしいのは前髪だけじゃなくて……。



「ナベちゃん、眼鏡もやめたの?」

…そう。前髪を切った私を見てお母さんが凄く喜び、
『せっかく可愛くなったんだから、メガネもやめてコンタクトにしなさい!』
と言って、昨日は無理やり眼下に行かせられ、久し振りにコンタクトを購入、そして今日はそれを使用していた……。
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