強引上司の溺愛トラップ
「いーじゃん、ナベちゃん。可愛くなったよー」

係長さんが明るくそう言ってくれたので、恥ずかしさはあるけど、気まずくはならなくて済んで良かったと思う。


「課長もそう思いますよねー?」

えっ、ちょっと係長!課長に同意を求めないでください!課長が私のことを「かわいい」なんて言う訳ーー


「……おう」


あれ?今、ボソッと課長も褒めてくれた?聞き間違いかな?




その時、営業室の廊下の方から、一島くんと先輩の話し声が聞こえてきた。一緒に出勤してきたみたいだ。


うわーどうしよう。一島くん、この前髪見て何て言うかな……ドキドキする……。


怖い、恥ずかしい、緊張する。でも……ちょっとだけ期待しているような、調子のいい自分がいる。




一島くんと先輩は、そのまま一緒に営業室へと入ってきた。


「えー、じゃあ一島、金曜日はそのまま彼女の家泊まったの?」

「はい。終電には乗れたんですけど、彼女からちょうどメールがあったので」

「今から会いたいって?」

「あはは。そんな甘いもんじゃないですけど」


……その会話を聞いて、私は思わず固まってしまった。
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