今でも時々夢に見る。

夕暮れの橋の欄干に佇む十歳の自分。

ただ伸ばしっぱなしの髪を一括りに結び、真一文字に口を結んで川面を見る。

ランドセルの重さに引っ張られて首が苦しいからと、胸元を引っ張るのが癖になっているTシャツはいつもよれよれだ。


大通りからそれたその橋のある小道は、通学路からも外れている。
先生からは暗くなってからは近づかないようにと言われているところだ。

辺りに人気はなく、喧騒は少し離れた大通りから別世界の音のように響いてくる。


私は欄干に手を載せ、川を見下ろした。

そもそも川というよりは大きめの用水路という感じなんだろう。
幅がニメートルないくらいで、しかし深さはそれなりにある。


川の水は夕日を受けて橙色に光る。
かと思えば、ところどころ深いところは黒い。


諍う両親の声が襲いかかる化け物のように蘇る。

楽しそうなクラスメイトの中に作り笑いで溶けこむ私は、いつもその声を意識している。
声の聞こえない場所でもずっと。


きっと、溶け込めてなんかいないのだろう。

暗く沈んだ私は、きっと、この水のように照らされても光れない。
まやかしを取り払う光は、私の暗闇など簡単に暴いてしまう。


見つめていると、吸い込まれそう。

深く淀んだような黒に、「こっちにおいで。ひとりじゃないから」と誘われたようなような気がした。


私は小石を蹴る動作をした。
とは言え小石などはなく、足は欄干の隙間を通り、また戻ってくる。

境界線を超えるのは、簡単なように思えた。

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