「いらっしゃいませ」


もう何度言ったかわからないほど、同じ言葉を繰り返す。

【U TA GE】に来るお客様は、ビジネスマンが多い。
それは立地のせいもあるけれど、現代人は案外胃が疲れているんだろう。

この店には洋風の鍋もあるけれど、注文として多いのは和風の胃に優しそうな鍋だ。

人気があるのは、昨年の夏に限定メニューとして出し、その後リクエスト多数で定番メニューになった和風ポトフ。

ごぼうの旨味がしっかり出ていて、噛みしめると染みてくる、そんな味がする。
接待料理に疲れた人が注文するのか、ゴールデンウィーク明けから妙に注文が増えた。

今の期間限定メニューの、新玉ねぎのワイン煮込みと同等数出てる。

まあこれはちょっと変わり種のメニューだから、安定志向のお客様が頼みにくいってのもあるかもだけど。

お客様から注文を受け、戻りながらテーブルの空き具合を確認する。

厨房では大きくテーブルナンバーとメニューを告げ、注文順にマグネットで視線の高さに止める。

いつもの流れ、いつもの作業。
でも気を抜くと失敗するから、ちゃんと確認しつつやらないと。


「つぐみ、十三番テーブルのできた。運んで」


同じテーブルのものは割合同時に仕上げてくれるので、素早く運ぶのが大切だ。
十三番テーブルは四名様で、出来た料理はお盆を使って両手で運んでも二回はかかる。


「ハイ。……あ、上田くんゴメン、持ちきれないから一緒に運んで」


前に、一度で持ちきれずに先にテーブルに出し、戻る途中でお客様に呼び止められて手間取ってしまい、叱られたことがある。

お客様をお待たせするのもよくないけれど、お食事を一番美味しいタイミンで出せないのは最悪だ、と。

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