夏とサイダーと手紙
夏とサイダーと手紙
身体中の水分が、少しでも熱を冷まそうと皮膚に空いた無数の穴から次々に体外へと出て行く。

その水分の粒達が薄いワイシャツの下の肌を撫でていく感覚が、俺が夏という季節が苦手な要因の一つだった。

強烈な八月の日差しは殺意を持っているかの様に大地へと降り注ぎ、鉄板みたいに暖まったアスファルトに当たって全反射する。

学校の夏期講習の帰り道、通い慣れた海沿いの小道で自転車を走らせる。

等間隔でペダルを踏む自分の体が、既に限界が近い程に暖められている様に感じる。
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