Hospital waste
機能美と造形美
『だが駄目じゃないか、患者が好き勝手に歩き回っちゃあ』

嘲るように、からかうように。

スピーカーからは声が漏れた。

「入院した覚えはないんだがな」

まるで声の主が目の前にいるかのように。

アレックスは監視カメラを睨みながら言う。

「俺達が患者だというのならば、きっちり目の前に姿を見せてから話したらどうだ?カメラ越しじゃあ患者に安心感は与えられないぞ」

『成程、一理ある。だが私も多忙でね。カメラ越しのままで失礼するよ』

巨人の肩越しに、スピーカーからは饒舌に言葉が紡がれる。

『私はアンドレイ=ホプキンス。当病院の院長を務めている』

聞いた名前だ。

世界的に有名な天才外科医で、数々の難病の手術を行うべく、世界中の病院を行き来しており、その手術成功率も極めて高い。

世界初の症例や過去類を見ない術式も悉くやり遂げ、ゴッドハンドの異名を恣にする、医学界ではまさしく神。

金の長髪、蒼い瞳、整った顔立ちの写真は、アレックスも何度か目にした。

< 81 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop