心の中を開く鍵
「……デートのつもりだって言っても、付き合ってくれんだな?」

不思議そうにする翔梧を見上げ、ちょっとだけ笑う。

「どうせ暇だし」

翔梧を言いくるめようとしても、無駄だろうと思うんだ。

ある意味、自分勝手な部分は変わらないんだと思うし、少し強引なところも出てきたみたいだし?

昔のことは……忘れることはないとは思うけど、昔のことばかり考えていても先には進めないから。

新たな関係を築けるかどうかは……わからないけど。

「じゃあ、仕切り直しするかな。真由はどこか行きたいとこあるか?」

急に気を取り直した翔梧に、首を傾げて難しい顔を返す。

「デートの定番って、映画と、遊園地系と、他に何があるの?」

「……高校生のデートか?」

「悪い? 私の知識なんてそれくらいよ」

高校時代のグループ交際じゃ、皆はグループデートって言っていたけど、単にみんなで集まって、わいわいして騒いでいただけなんだし。

「……それは嬉しいな」

どこか冷静に言われて、訝しげに翔梧を見る。

「真由も“あれから”一人も付き合った男がいないんだと、とてもよく解る」

「……はあ? 私は“恋愛お断り”していただけよ」

「ちなみに、未だにお前は引きずっている……とか。俺って愛されてんな」

……どうしよう。何だか勝手な分析されてます。

「翔梧って、思い込み激しいんだね」

「言い続けていたら、そうなるかもしれないし」

「私、やっぱり帰ろうかな」

ポツリと呟くと、手を掴まれた。

「とりあえず、買い物デートでもしよう」

「買い物デート?」

「まぁ、ぶらぶらするだけかな。次の時はドライブデートしよう」

「次回があるのかしら」

「あまり拒否られると、いろいろと計画して実行に移すぞ?」

真面目な顔で振り返られて、当たり障りなく愛想笑いを返した。

……それって、脅しとか言わないかな?
< 59 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop