キラキラ想い出マーブルチョコレート


「同僚の紗南に、多分健ちゃんであろう彼を引き合わせることができたのだよ」

ふふんっ、と私はまたも得意げに笑って見せる。
ワトソン君に対する人差し指も忘れない

すると、涼太は期待したとおりのリアクションを見せてくれた。

「えっ!? 健ちゃんて、あのチョコレートの健ちゃん!?」

ほぉ~ら、みなさい。
ワトソン君、驚いたでしょう?

涼太の食いつくような驚き顔に、私は満足げに笑いつつ益々得意げになる。

「そうそう。色々端折られてるけど、大体合ってるそのチョコレートの健ちゃん」

どんなもんだい、と一昔前の小学生みたいに人差し指で鼻の下を擦りたいくらいだ。

なのに涼太ってば。

「恭子、その健ちゃんのこと探し当てたの? マジかっ! すげーな! 探偵みたいだな! どんな手を使ったんだよ」

なんか最後の一言って、人聞き悪くない?

口にはしないものの、私は不満を顔に出す。
その表情に気がついたのか、涼太は言い過ぎたとばかりに珈琲をまた口にした。
涼太が誤魔化したことに気がつかないふりで、私はサラリと話を続ける。

「あのね、うちに来てる営業君のことなんだけど。よくよく話を聞いてみたら――――」
「えっ!? 何。ちょっと待てよ。恭子、その営業君と仲良くなったわけ?」

話を思いっきり遮った涼太は、食らいつくくらいの勢いで前のめりに訊いてくる。
ゾンビ映画ならここで襲われるのは間違いない。

「あのさ、そこ引っかかるとこじゃないし」

話を中断されたことと、ポイントのずれている涼太を指摘する。

「いやいや、そこ大事でしょ」

なのに涼太は、とっても大切なことだろう。といわんばかりの目をして訴えてきた。

そんな目で見られてもねぇ……。

ゾンビ相手なら、このノートブックが納まる鞄で急所の頭部をおもいっきり一打して終わらせるところだけれど、愛しい相手にそんなことするわけにもいかないし。
もう、面倒くさいなぁ。


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