キラキラ想い出マーブルチョコレート
「仲良くなったって言ったって、所詮仕事関係者だよ」
焼きもちは嬉しい時もあるけど、今はちょっと面倒くさい。
いや、結構面倒くさいのだ。
だって私は、早く二人の話を聞いて欲しいのだから。
どうやって涼太の気を逸らすか頭の中で首を捻っていたら、涼太は口を尖らせねっとりとした目で私に釘を刺してきた。
「まーいいや。あとで追求な」
今は取り敢えず話を聞いてやる。
そんな感じで、上から目線の涼太が腕を組んでなんとか聞く態勢になったのだけれど、その態度にあとで更に面倒なことになるのかと、最初の勢いが削がれて少しテンションが下がってしまった。
それでも二人の話をしたくてウズウズしていた感情を抑えられず、私は気を取り直すべく少し冷め始めた珈琲を飲み、紗南と健ちゃんのことについて気持ちを整える。
「とにかくその営業君が言うには、紗南は自分がずっと逢いたかった幼馴染のような気がするから、会って話してみたいっていうのよ。だから、私が引き合わせてあげたの」
「えっ!? ちょっと待てよ」
え……、今度は何に引っかかったのよ。
私は二度目になる涼太の“えっ!?”を警戒する。
「健ちゃんて、営業君のことだったのかよ」
「営業君が健ちゃんだよ」
「どっちでもいいし」
確かにたいした問題ではない。
それより。
「そう言わなかったっけ?」
「言ってないし」
さっき上から目線で営業君相手に焼きもちした自分が恥ずかしくなってしまったのか、涼太が少し唇を尖らせて頭をぽりぽりとかいている。
これで、“あとで追求”はなくなっただろう。
涼太は自分の焼いた焼きもちを誤魔化すように、で? で? なんて急かすように話の続きを促した。
「紗南って子は、想い出の健ちゃんのことがあってとても一途なわけよ。社内で何人か言い寄ってくる社員もいたけど、みんな撃沈してるんだよね。で、私はいい案を思いついたのよ」
またもワトソン君登場で、私は人差し指をピンッと立てる。
「私自身のことを引き合いに出せば、心優しい紗南なら親友を立ててくれるだろうってね」