だって、キミが好きだから。

暗闇



今日は定期受診の日。


いつものようにお母さんと一緒に病院に来た。



「うーん」



先生はMRIの画像を見ながら難しい顔をする。


そして、クルリとあたしとお母さんの方に体を向けた。


ドクンと鼓動が跳ねたのは、良くないことを言われるってわかったから。



「少しずつだけど、大きくなってます。本当に症状はないんだね……?」



先生の言葉が刃物のように胸にグサッと突き刺さった。


えぐられるように痛くて胸が苦しい。



「ぐ、具体的にどんな症状が出るんですか?」



お母さんが涙目で訴える。


いつも思うけど、どうしてお母さんはそうやって聞き返すことが出来るの……?


あたしにはムリだよ。


怖いよ。


怖くて聞けない。


聞きたくない。



「前にも言いましたが。具体的に物忘れが多くなったり、言葉の意味がわからなくなったり。短期記憶……例えば、約束を忘れるとか顔はわかるのに、人の名前がわからないといった症状です」



「……あ、ありません」



あたしは蚊の鳴くような声で返事をする。


先生の目は見れなかった。


スカートの上で握り締めた拳に目をやりながら、小さく震えていた。


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