好きだと言ってほしいから
忘れられない
「葵ぢゃああぁぁぁぁん」

「あー、よしよし。思い切り泣いちゃいな」

 そう言いながら、葵ちゃんはティッシュを箱ごと持たせてくれた。二、三枚をまとめて掴んで勢いよく鼻をかむ。

「うっく……えっ……っく」

 それでも私の鼻水は一向に止まってくれないし、目元はまるで洪水だ。

「もう、そんなに泣くなら何で聞き分けのいい女なんか演じたのよ」

「だって……っく……」

 膝に抱え込んだティッシュの箱に手を伸ばし、私はもう一度鼻をかんだ。

 逢坂さんと別れた翌日、仕事を終えた私は葵ちゃんの部屋に転がり込んでいる。彼女のマンションは会社からバスと電車を乗り継いで 20分だ。私からすれば近くて羨ましいのだが、一本で行けないところが彼女には不満らしい。

 会社自体が不便な場所にあるから大抵においては仕方のないことだとは思うけれど。都会と違って田舎は車社会だから、私も葵ちゃんも自分の車を持つべきなのかもしれない。

「まあ、今日は思い切り泣いてスッキリさせなよ。もう一人、呼んだからさ」

「もう一人?」

「えっとね……」

 葵ちゃんが言いかけたとき、ちょうどインターホンが鳴った。

「あ、来た来た」
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